倉地類人加奈子

第一章



「二つのビジネスのやり方」

初めまして。こんにちは。倉地加奈子と申します。この書籍には、「たった一ヶ月で商品を持ち最短で起業する非常識な方法」が書かれています。私は自分の住んでいる街の駅前にあるホテルの会員になってまして、よくそのホテルで、お客さんを集めてセミナーをしたり、ラウンジを利用して仕事をしたりしています。

ある日の夜、根つまった仕事があり、一人でラウンジでパソコンを前に黙々と仕事をしておりました。私は集中したい仕事があると、子どもを主人に見てもらって、ホテルのラウンジでよく仕事をしているんです。すると、近くに座ったエリートサラリーマン風の二人から会話が聞こえてきます。

ワタル
ツカサ、今週いいことあった?

ツカサ
なにかあったかな?思い出せない。それより今日はビールがうまいな。ビールがうまいということは体調の良い証拠なんだよなー。

ワタル
それより起業するなら、好きなことだけやって幸せになるか、まずは儲かることを先にするか?どっちが幸せになれると思う?

ツカサ
うん?成功すれば、どっちも幸せじゃね?

ワタル
それより、あそこにいる人、こんな時間に一人でいるよ。声かけてみない?

この時、もう私は、「あー、めんどくさいことになりそうだな。」という予感がありました。そしてその予感は見事に的中します。しばらくして私は、ほろ酔いの男性二人にナンパされることになったのです。この書籍はその時のエピソードをもとに書き下ろしたものです。この二人との会話がその後、面白い展開を見せるきっかけになるとはその時は思いもしませんでした。二人組の男性は、私が座っているソファ席の対面のソファにいきなり座って話しかけてきます。

ワタル
すみません。ちょっといいですか?

ツカサ
お一人っすか?

私の心の声「めんどくさいなあ…。なんか来たぞ。」

ワタル
僕ら、出張でこの街に来てるんですけど、明日、7時にセントレアに向かって海外にいくんですけど、もしよかったらちょっと話しませんか?

今日、すごい忙しくて、それでここに泊まってるんですよね、お仕事が溜まっててだから…

ツカサ
あ、お仕事ですか?出張とかで?

いや、そうじゃなくて近所に家があるんで…

ツカサ
近所に?近所に住んでるのにここで仕事してるっすか?

ええ。集中したいからなんですけど。だから忙しいのでいいですか。

ツカサ
てか、何やってる人ですか?

私の心の声「あーもう!うるさいな。」

あー、一応個人で会社やってますけど…

ツカサ
え?起業家の方っすか?

私の心の声「仕事させろー!」

ワタル
二人とも外資の保険の営業やってるんですけど、今、起業考えてて、「起業で成功するには、好きなことだけして成功するか?まず、儲かることからやるか?どっちが幸せになれるか?」って二人で話してたんですよ。もし良かったら起業家の先輩としてアドバイスもらっていいですか?どっちだと思います?

いやもう、全然時間ないし。頑張ってやってもらったらいいんじゃないかな?多分、私とは話し合わないと思いますよ。

ツカサ
冷たいじゃないですかあ。これも何かの縁だし。一応、僕ら売れてる営業なんですよー。明日、セントレアから立つのも世界表彰のためで。シンガポールで表彰があるんで。一応こう見えても年収もそこそこなんです。だから是非ともお話ししましょうよ。

ワタル
僕ら外資でもトップの保険会社のJ社なんですよ。

J社ね。名前は存じ上げてますけど、それで?

ツカサ
え?いやあの、二人とも日本でもトップ30に入ってるんですよ。成績で。

へえ、そーなんだ。頑張ってください。

ツカサ
もう冷たいなー。さっきの話の起業で成功するにはどっちがいいか?っていう話。好きなことだけして成功するか?まず儲かることからやるべきか?どう思います?

そんなの人それぞれでしょ。まあでも、その考えで起業してもうまくいかないと思いますよ。

ツカサ
ん?え?うまくいかない?なんでですか?

だって二人の言っていることは、起業したいって言ってるだけの人がよく言ってることだもん。そんなことを言っている人ってたいてい、起業しないんですよ。

ツカサ
え?そうなんですか?

ええ。起業しないか、起業したとしてもうまくいかない人がほとんどですよ。って、もういいですか?いい加減に。

ワタル
ちょ、ちょっと待ってくださいよ。なぜ僕らが起業しないとか、起業してもうまくいかないんですか?それ、聞かないと引けないなー。

私の心の声「ねばるなー。終わらないから強く言っちゃうか…。」

ふー、私に声かけた時、二人とも大手の会社の看板を振りかざして声をかけている時点で、看板がないと勝負できない人の典型例。あと自分は売れてるとか成績が出てるとか年収がどうだとか、相手が望んでないことをペラペラ喋る人がほんとに売れてるのかなあ。そんな人が起業したらなにでアピールするわけ?

ツカサ
え?ど、どういうこと?

だって起業するんでしょ?J社辞めるわけでしょ?そういう人って、自分のテリトリー範囲の、「落とせるだろう」って思う人しか声をかけられない人の典型例。そんな状態で今の会社というテリトリーから出て、起業家になれると思う?

ワタル
な、なれると思いますけど。

あなたたち、そんな価値観だと、今まで自分が高嶺の花だと思った人に声かけたことないでしょ?自分のブランドや会社名やその中の実績でなびいてくれそうな人だけに声をかけてただけで。私もホテルのラウンジで一人でいる寂しそうな女性だと思ったから、それなら簡単そうだと思ったんじゃないの?

ワタル
い、いや、そんなことは思ってないですよ。

見え見えだよ。そういう狭い枠の中でしか行動できない人は今の自分よりも大きな新しいものを手に入れることはできない。しようともしない。だから、起業しない人が多い、仮に起業してもうまくいかないよ。だから今の仕事を淡々とやったほうがいいよ。

ツカサ
ちょ、ちょっと待ってくださいよ。二人とも本当に起業したいと思ってますよ。

だったらやればいいじゃない?

ワタル
いやでも、準備ってものがあるじゃないですか?

準備って何?

ワタル
いや、心構えというかなんというか。

へえ、じゃあその心構えができたら起業できるわけ?どんな心構え?

ツカサ
いや、だからその前に今、起業塾に通っていて、それを鍛えてるんですよ。

へえ。すごいじゃん。鍛えているんだ(笑)。だったら、そのまま鍛えたらいいじゃん。うーん、平行線だからもういいかな。

ツカサ
ぜんぜん、よくないですよ。僕たちの何がいけないのかさっぱりわかりません。

私の心の声「やばい。終わらせてくれない。どうやって終わらそうか…。」

本音で言うけど、私から見ると、二人とも女々しいんだよね。そういう人、起業に向かないの!これでいい?

ツカサ
女々しいってなんっすか?ますますわかんねー。

起業で成功したいなら、そっちを今すぐ選択すればいいじゃない!それなのに、会社にしがみついて、それを振りかざして声をかけてくる時点で、もっと自分たちにはふさわしい女性がいるはずだと思いながら、好きでもない彼女との関係を続けている恋愛ドラマに出てくる女々しい主人公みたいに見えるよ。

ツカサ
・・・。

ワタル
・・・。

そういう女々しい人って、起業しないし、起業したとしても、元カノとの関係を引きずりながら次に進んでいく感じになる。それじゃあ、起業したってうまくいくわけがない。守ってくれている枠があるからやれている人の典型例。まさにザ・サラリーマン。起業したって前の会社の栄光に浸って、ドラマで言ったら、元カノとの栄光にしがみついて、いつでも戻れるという保険をかけて退路を断てない女々しい主人公みたいな起業家になるのは目に見えてる。

ワタル
・・・。ひどい言われようだな。まあでも、恋愛で例えられるとリアルだな…。

でもこういうのって、恋愛で例えるのが一番わかりやすい。二人ともいつも同じような人とばかり付き合ってきたでしょ?起業してうまくいくような人はね、付き合うたびにどんどん高嶺の花だと思っていたような人と付き合う感じになる。人付き合いも退路を断って、新しい人に進んでいけるからね。あなたたちはそうはなってないでしょ?

ツカサ
うーん、ちょっと図星なところがあるのがきついですけど…。

あなたたち、起業ってなんのためにするの?会社ではできる以上のことをしたんじゃないの?でも二人は会社という枠の中にいながら起業しようとしてる。そういう人って、その枠の中で起業するために頑張ってる自分が好きなんだよ。起業することがゴールの人が多い。起業まで頑張る自分が好きで、結果、会社にずっといる。だったら会社で活躍することを目指したらいいじゃん?優秀なんでしょ?そういう生き方もあると思うよ。

ツカサ
いやいやだから起業したいって言ってんじゃん!

へえじゃあ、明日、J社を辞めてきたとして、何で起業するの?

ツカサ
いやそれは…。今、勉強してて。

勉強して起業ができるの?その勉強はいつ終わっていつ起業するの?商品は何?お客さんはどこにいるの?

ツカサ
・・・。

ほら、だから起業するなんて口だけで本気じゃないんだよ。本当に起業しようとしていたらそうはならない。あなたたち二人は優秀なわけでしょ?もしそうなら、会社から好条件や良いポストなんかの話が来たりすると、起業することよりそっちにすぐになびいちゃったりする。

ツカサ
あ、ワタル、そう言えばエリアマネージャーに昇格の話、もらってなかったっけ?

ワタル
ああ、もらったよ。アジア地区の担当を打診されてる。

それ受けたらいいじゃん!多分合ってるよ。どうせその話をもらった時、君は、「上司は自分のために言ってくれている!」とか、思ったんじゃない?

ワタル
・・・。そりゃ思いましたよ。違う考え方する人いるんですか?実際、僕のことを買ってくれて、上司は言ってくれてるわけだし。

だからあなたたちは起業しないって言ってるんだって。私も大手の会社にいたからよくわかるんだよね。私があなたと同じような話をもらった時、私はちょうど起業を志して辞表を出していた。私を引き止めるために会社が言ってくれたんだけどね。実際、私はその話をもらった時、こう解釈した。「会社のトップの人が私のことを買ってくれて栄転の話をしてくれたということは、これは起業を目指す私にとって鼻向けの言葉だ!」って、「君なら起業家として成功できる!」と言ってくれてるって。だからそういう打診を受けても、辞表を撤回することはなかったし、ある意味、逆に起業に対する自信になった。でもあなたはその打診を受けて起業すること自体も揺らいだでしょ?

ワタル
え?ま、まあ…。

だから本気で起業しようとしてる人は同じような場面に遭遇しても捉え方が違うんだって。二人とも私のような考え方をする人にこれまで会ってないんじゃない?狭い枠の中で、何かをひきづったままで進んでいく生き方をしてる人しか知らない。今のままじゃ、会社で上を目指すほうが向いてるよ。それができるってすごいこと。起業するなんて理由をつけてぶつぶつ言いながら会社員やるんじゃなくて、会社員として上を目指してみたら。その方が向いてる。私の言えることはそれだけ。ほんともういいかな?

ワタル
・・・。

という会話が終わり、二人は私の前から去っていきました。ふー、やっと仕事ができる。私は彼らが去ったあと、仕事に没頭し始めました…、のも束の間、なんとその二人が私の前に再度、やってきたのです。

ワタル
さっきは貴重な話をありがとうございました。仕事があるのに勝手に話しかけてしまってすみませんでした。でも、あれからなんかモヤモヤしちゃって、芯を突かれたっていうか、今まで僕たちにこんなこと言ってくれる人がいなくて。このタイミングを逃したら起業できない感じがしちゃって。もうちょっと、教えてもらえませんか?この通りです。

ツカサ
お願いします!ほんとなんかガツンと刺さっちゃいました。教えてください!

そう言うと、二人は直立で頭を深々と下げたのでした。

私の心の声「またやってしまった…。」

ちょっと恥ずかしいから頭を上げてよ。とりあえずいったん座ろうか。よく、こういう感じになっちゃうからあまりガツンと言わないんだけど、二人ともしつこいから!

ワタル
ほんとすみません。でも言ってもらってよかったです。

ツカサ
姉さん、心をガッツリ持ってかれました。その先の話をぜひ、教えてください。

姉さんはやめて。加奈子といいます。二人ともお名前は?

ワタル
ワタルです。

ツカサ
ツカサです。

ワタルくんとツカサくんね。私も一応、本当に忙しいからさ。あと30分だけ話をしてあげる。

ツカサ
姉さんありがとうございます!

ワタル
ありがとうございます!

ちょっと本当にやめて。姉さんは。

ツカサ
すみません。加奈子さん!

で、なんで戻ってきたの?

ワタル
加奈子さんの話で自分の中にある何かで突き動かされた感じです。これを逃してはダメだと思いました。

ツカサ
自分も同じことを思いました。この機会を逃してはいけないと。このままではダメだと。

なるほど。今二人を突き動かしたものの正体を言ってあげよっか。二人を突き動かしたもの、それはミタマだよ。

二人
ミタマ?

そう。ミタマ。その言葉に深い意味はないよ。私がそう呼んでるだけ。説明がしにくいから私がつけた名前。歌でもよくあるじゃない?心の火とか、魂の叫びとか、自分の中の炎とか、光とか、そういう類のもの。説明しにくいものだから、とりあえずミタマにしておいて。要するに内面から湧き上がってくる情熱みたいなもの。いつもは箱の中にあって、それが湧き上がってくることはないんだけど、あるきっかけによって、箱が開いて立ち現れる。二人の状態が今、そんな感じの状態じゃないかな?

ワタル
そう、そんな感じです。これってなんなんでしょう。

ミタマの正体は説明がしにくいけど、けど誰もが持っているもの。だけど、そのミタマの習性は説明ができる。ちなみにこのミタマの習性をあなたたちが理解できたら、今、二人が私のところに戻ってきた理由も、自分のテリトリー以外の高嶺の花の女性を手に入れられないのも、起業できない理由も、起業してもうまくいかない理由も、そして起業で成功するための理由もすべてわかる。だからしっかりと理解して。30分でそれを話していくから。

ワタル
ミタマの習性?わかりました。よくわからないですけど、なんとか理解してみようと思います。

まず、ミタマはいつもは、「今のままじゃ嫌だ!ボックス」に入っていて、箱から出たいと思っている習性がある。ちょっと絵に書いて説明しようかな。

そしてこのミタマは、一度、今のままじゃ嫌だ!ボックスから出ると、今度は、磨きたい、大きくなりたいという習性がある。これがミタマの大きな特徴。

今、二人が私のところに戻ってくる時に働いたものがミタマだって言ったけど、それは、私との会話がきっかけになって、二人の今のままじゃ嫌だ!ボックスからミタマが飛び出してきたから。まさにそれはミタマの習性そのもの。

ワタル
確かに加奈子さんとの話が終わった後、ソワソワして今のままじゃ嫌だ!って思ったし、「このままだと本当に起業できないんじゃないか?」って思いましたけど、でもなんで、加奈子さんの言う、僕らの今のままじゃ嫌だ!ボックスが開いたんでしょう?

それは、自分たちがいる枠の外の世界というか、自分たちが想像もしないような枠外の人やものや考え方に触れたことで、箱がある種のショックで開いたから。そういう時にフタは開く。

ツカサ
なるほど。確かにそんな感じです。正直、加奈子さんに声をかけた時は、そんな言葉が返ってくるなんて予想もしてなかったし、予想していなかった言葉のシャワーによって、どんどん休憩していたものが呼び覚まされるような感覚になっていきました。

ミタマを誰かに箱から出してもらうような経験をすると、それをされた人はしてくれた人を「運命の人だ!」くらいに思ってしまう。さっき、二人が言ってた、「逃しちゃダメだ!」とか、「持ってかれた!」とか、言葉がそれを証明してる。

ワタル
あー、まさにそんな感じです。

ミタマは磨きたい、大きくなりたいという習性があるんだけど、その人がミタマを磨いている時というのは、高揚感を伴った強烈な快感を感じるという習性がある。心に火がつくとか、燃える、魂が揺さぶられる、みたいな表現をよくされるけど、理屈じゃない自分の中にあるものによって突き動かされているような高ぶりを抑えられなくなるしソワソワする。

ツカサ
な、なんで僕たちの今の気持ちがわかるんですか?

ミタマはみんな持ってるものだし、その習性は誰でも同じだからね。ちなみに誰かによって今のままじゃ嫌だ!ボックスからミタマを取り出されるとどういうふうになるかというと、今の自分がぜんぜん自分らしくなくて、”ありのままで生きていないこと” を直感的に理解してしまう。現在の自分は、自分の本質が生かせていない感じというか、「こんなものじゃない、まだまだ自分はやれる!」みたいな思いが湧き上がってくる。

ワタル
ま、まさにそうです。

ツカサ
俺は加奈子さんが僕らが高嶺の花を落とせない男だと見破った時、メラメラと来ましたけどね。

そういう何かや誰かをきっかけにして、ミタマが今のままじゃ嫌だ!ボックスから出た人は、ミタマの習性によってその人の行動が変わる。ミタマの箱の中から出たいというもともとある習性が呼び起こされ、磨きたいという習性によって行動が変わっていく。そしてその変化には快感が伴う。それと同時に今までの行動が自分らしくないというか、自分が生かせていなかったということを嫌というほど実感することになる。

ツカサ
うわあ、その通りですねー。僕たちの心の中でそんな変化が起こってたんですね。

だからちょっと前に私が、「あなたたちに自分たちと捉え方が違う人に会っていないんじゃない?」って言ったんだよ。そういう人としか会っていないと、ミタマは箱の中に閉じ込められたままで、燃える感覚で生きていない感じになる。まさにさっきまでのあなたたちがそう。

ワタル
でもなんで、加奈子さんは僕たちがそういう人間だとわかったんですか?

ミタマって磨きたいとか大きくしたいっていう習性があるって言ったでしょ。だからミタマで動いている人は、内から湧き出る魅力を感じさせる雰囲気が帯びている。少なくとも、ブランドや年収、会社での成績を誇って女性を口説こうとはしないよ(笑)。その行動は、自分たちのミタマは、まだ箱の中にいると公言しているようなもの。相手に対して、その箱がいかに素晴らしいかを自慢しながら女性に声をかけているようなもの。それでは高嶺の花の人がものにできるはずがないでしょ?

ツカサ
うわっ!ダサいっすねー俺ら。

ワタル
さっきの僕らの行動を取り戻したい。なかったことにしたい(笑)。じゃあ、僕らが起業しないままで終わるとか、起業してもうまくいかないと言われたこととそのミタマはどう関係があるんですか?

今のままじゃ嫌だ!ボックスにミタマを閉じ込めたままにして生きている人が、起業したいと言っている時は、表面的な「今のままじゃ嫌だ!」という理由から。一方、起業したくてしょうがない人は、ミタマが箱から出ていて、”ミタマの習性から起業したい” と思ってる。ミタマには磨きたい、大きくなりたい習性があるって言ったでしょ。磨くと幸福感を伴った燃えるような快感が得られるって。その快感はどんなものより強い。ミタマを磨いている人はそれを知っているから、さらにそれを味わうためという動機で起業を志す。だから雰囲気が違うし、大抵の場合、もう動き出しているよ。そういう人は起業してもやっぱうまくいきやすい。「今のままじゃ嫌だ!」という表面的な動機で起業した人がその後どうなるかはわかるでしょ?

ワタル
それはもう、本当に…。加奈子さん、さっき、僕らに「本当にあなたたち売れてるの?」って言ったじゃないですか?その言葉、すごく気になってて、一応これでも僕たちある程度、売れているんですよ。なぜ僕たちが売れてないと思ったんですか?

私も19歳から、ずーっと営業してきた人だからわかるの。あなたたちがどんなふうに売っているのか。あなたたち、今、営業をしていて、楽しくないでしょ?

ツカサ
え?営業って楽しいものなんですか?俺、一度も営業という仕事を楽しいと思ったことないですけど?

それで売れてるあなたたちは、ある意味すごいけど、そんな働き方してたらそのうち辞めたくなるよ。

ツカサ
あ、いや、もうなってます。

私は営業をしてきて、いつもいつも楽しかったし、天職だと思ってた。なぜだと思う?

ツカサ
そもそも楽しくないからわからないっす。加奈子さんは売れてたんですか?

私は19歳から10年ちょい会社員時代に営業をし続けてきたけど、一度もスランプはなかったし、あなたたちみたいに毎年、表彰をされ続けていたよ。でも、あなたたちとは売り方が根本的に違っていた。だから楽しかったんだよ。

ツカサ
いったい、どんな売り方したら営業が楽しくなるんですか?

商品の売り方には二つあるの。あなたたちは一つの売り方しか知らない。ちょっと難しくなるから、わかりやすい日常の例で話していくと、そうだな、あなたたち、チャラい髪型してるじゃない?

ツカサ
”今時の髪型” と言ってくださいよ(笑)

その髪型、似合ってるとは思えないけど、ツカサくんは今の美容院は気に入ってるの?

ツカサ
やっぱ似合ってないですよね?わかってます。いや、実は今の美容院、まったく気に入ってなくて、だから今、理想の美容院を探索中なんですよ。

そうなんだ。じゃあ、ツカサくんにとっての理想の美容院って何?

ツカサ
そうですね。もちろん、髪をかっこよく切ってくれるのは大事ですけど、それよりも自分に合ったというか、「自分の理想の髪型とかスタイルとか、自分の魅力を最大限に引き出してくれる美容師を見つけたい」と思ってますね。

つまりはそれって、自分の理想の髪型を手に入れて、今のままじゃない、まだまだ引き出せていない自分の魅力をもっと引き出してくれる人が欲しいと思ってるってことでしょ?

ツカサ
え?あ、そうかも。そうですね。

それって、「今のままの髪型じゃ嫌だ!」という箱から自分の魅力を引き出して磨いてほしいってことを言ってるわけ。

ワタル
ん?それってミタマの習性ですよね?

そう。これ、どういうことかわかる?

ワタル
ん?ミタマと美容師の仕事が関係してるってことですか?

そう。人はミタマを箱から出してくれる人と磨いてくれる人にお金を払いたいと思っている。

ワタル
え?ということは美容師は髪を切ることを通じて、お客さんの箱からミタマを出して磨く仕事をしてるってことですか?

ツカサくんのそのへんな髪型にした美容師にそれができていたら、ツカサくんは美容院を探し続けていないんじゃない?

ツカサ
そうですよ。あ、でも以前、気に入ってた美容師さんがいて、その人に髪を切ってもらっていた時は、毎回毎回、自分の魅力が引き出されている感じがして、その美容院に行くのが超快感だったんですよ!でも、その人いなくなっちゃって…、それからはあの快感が忘れられなくて、理想の美容師探しをずっとし続けてますね。

人は、無意識に今のままじゃ嫌だ!ボックスから、自分の隠れた魅力、つまりミタマを出して磨いてくれる人を探してる。「自分のありのままを引き出してくれる人を見つけたい!」「その人について行きたい!」「その人で最後にしたい!」そんなことを思いながら実はさまざまなものにお金を払っているんだよ。

ツカサ
な、なるほど。なんか運命の人だと思える人との恋愛を待っている人みたいですね。まあ俺ですけど(笑)。でも、まさにそうです!「自分の魅力を引き出してくれる人が欲しい!」「俺にとって最後の人を見つけたい!その人で決めたい!」といつも思ってます。髪型でそうしてくれる人を。でも、なかなか見つからないんですよねー。

ツカサくんにとって、なぜ、なかなか理想の美容師が見つからないかというとね、ビジネスには二つのやり方があって、世間の美容院の多くが、一つのやり方しか知らないから。どういうことかと言うと、美容院だと、ただ本当に髪を切りたいだけの人もいて、美容院はそれだけを考えていてもビジネスにはなる。でも一方で、美容院にも、髪を切ることを通じて、「本来の魅力をもっと引き出してほしい!」「ミタマを磨いて快感を得たい!」という欲求から来ている人もいる。ツカサくんのようにね。そういう欲求に答えられるところがない場合、ツカサくんの希望はかなわない。もし、それを叶えてくれる美容院だったら高くてもお金を払うでしょ?

ツカサ
そうですね。なるほどー。じゃあ俺は、そういう美容院を選ばないとダメなわけですね。ただ髪を切りたいだけの人が行くところじゃなく。

その通り。髪を切ることだけを提供するところか、髪を切ることを通じて、顧客のミタマを箱から出して磨いて快感を得てもらうことを目的としているか、この2つは明確にやり方が違う。そして客層と客単価もまったく違うものになる。どっちが高単価のビジネスになるかわかるよね?

ツカサ
そりゃ、ミタマを磨く方ですね?僕もそれをしてくれるんなら、多少高くても通いますから。

でしょ?飲食店だって同じ。牛丼チェーンと高級フレンチでは売り物も目的も違う。高級フレンチは料理をただ提供してるだけじゃないでしょ?

ツカサ
なるほどー。確かに、美容院でもワンコインカットとかのお店もありますもんね。そこに来る人たちは俺のようなことは求めていないと思います。俺は強烈に求めてるんだけどなー。

ビジネスにはミタマが関係している。これ覚えておいてね。けど別に、そこに着目しなくてもビジネスはできる。保険を売るのでも同じ。二人はただ保険という商品を求めている人に、ただそれだけを売っているから楽しくないんじゃないの?

ツカサ
え?その通りですよ。でも保険ですからね。保険でミタマって無理なんじゃないですか?

無理じゃない。保険でも、私が売ってきた家具や住宅でも同じ。その商品を通じて、お客さんのミタマを磨くような売り方ができていれば、営業はとっても楽しい。それがお客さんにできると、さっき、ツカサくんが言ったように、その人にとって、運命的な出会いの恋愛にも似た感動を感じてくれる。会うお客さん会うお客さんが、いつもいつも、私のことを運命的な出会いだと思ってくれる。私の場合、そういう営業ができていたから、楽しかったし、これができると二人が思っている高嶺の花の人だって、落とせるようになる。高嶺の花子さんはそういう人を求めているからね。だから今の二人のやり方では落とせないんだよ。二人は高嶺の花のようなお客さんにとっての運命の人にはなれていない。

ツカサ
な、なるほど。そうかもしれない。売り方が2種類あるなんてはじめて知りました。会社でもそんなこと教えてくれないし。加奈子さんのような売り方している人、いるんですね。

私は19歳の時から、この売り方しかしてきていないし、ちょうどこの前、私のクライアントさんで、二人と同じように外資系の保険の営業をしている人にこの売り方を教えたの。そしたら、どうなったと思う?

ツカサ
どうなったんですか?

仕事が楽しくなって、お客さんの反応がまるで変わったって。成績もそれまでとはまったく違うものになったよ。

ワタル
じゃあ、僕たちにもそういう売り方できるんだな。

私が言いたいのは、商品の売り方には2種類あることを知っておく必要があるということ。そしてミタマの習性とか存在とかに着目しないと、商品を欲しい人にただ商品を売るだけのやり方しかやれないということになる。二人が今の仕事を好きになれないのはそういう売り方をしてるからだと思う。

ワタル
まさにその通りです。

それがわかれば私がこれから話すことが理解できるはず。ミタマが起業することとどう関わっているのか?ミタマを理解することがなぜ、起業の成功につながるのか?すべてわかる。ちょっと難しいけどついてきてよ。

ワタル
わ、わかりました!
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